「……でも、お前はあんな事を想像してたんだな。だから、今日一日中様子がおかしかったんだろ」

「えっ……」



一旦落ち着いたのも束の間。
彼は再び口元をニヤつかせながら墓穴を掘り起こした。



「合宿コンクールが近いからと言って変な深呼吸してたし、手汗がびっしょりで汗が滴りそうだったし、お前んちの前に行っても家に入れてくれないし、部屋ん中でブレザー脱ぐなとか必死こいてたし。…しまいには、じらしてるとか生理だとか言って。なんかおかしいと思ってたよ」

「そっ…それは………」



今日一日の不審な行動が全て見破られていく。
そのせいで再び水道の蛇口をフルに捻ったかのように冷や汗が噴き出した。



「まだ付き合いたてなのに、もう進展を考えてくれてたなんてな」

「そっ…そんなつもりは……」



意地悪発言を繰り返す彼に最後の一撃を食らう。
ピンチというものは簡単に脱する事が出来ないという事を身を以て知る。


穴があったら入りたい。
……ってか、穴に入る事が出来たらそのまま冬眠したい。