だが、左頬にゆっくりと近付かせていた唇は、怯える愛里紗の耳元でピタリと止まり、温かい息を漏らしながらくすぐるように耳元で囁いた。



「………なぁんてな。ハジメテなのにいきなり襲ったりしないよ」



理玖は赤面したまま、愛里紗に近付けていた身体をヒョイと上げて座り直す。
愛里紗はピンチを免れて安堵すると、深い吐息を漏らしながら疲れた身体を起こした。



「…何で私がハジメテだって事を知ってるのよ」

「この前、最後に付き合ったの俺だって言ってただろ。…まさか、俺の知らないどこかでもう誰かに捧げたんじゃねーだろうな」


「私がそんな事する訳ないでしょ。……なんで怒るの」



小さなヤキモチを妬いて不機嫌になる彼。
きっと、私を大事にしてくれている証拠なんだと思う。