理玖は右肘柱にして愛里紗にゆっくりと顔を近付ける。
ドキン…… ドキン…… ドキン……
心臓は再び暴れ狂った。
多分、そろそろ壊れてしまうだろう。
いや、既に壊れているのは私の脳内。
悪魔がしつこく囁き続けるから、いつしか理性が崩壊してしまったようだ。
インテリアの信号機の色はもう青に点灯しちゃっちゃったかな。
やっぱり、おばさん…。
今は部屋に入って来ちゃダメ!
ーーそれは、逼迫している私に不敵な笑みを浮かべた悪魔が再び君臨した瞬間だった。
オオカミの香りがプンプン漂い、エンジ色のネクタイを緩めながら迫り来る理玖を止めるかのように、両手で胸を支えてブンブンと首を横に振った。
嘘でしょ。
生理くらいじゃ諦めないの?
普通は遠慮するって何処かで聞いた事があるんだけど。
今日履いているイチゴ柄のパンツが見られちゃったら、いま生理じゃないって事がバレちゃう。
やっぱり今日がハジメテの日なの?!
無理無理…。
心の準備がっ……。
「えっ…!ちょっと」
理玖の香りとほんのり温かい気配は、動揺する愛里紗の左頬10センチまで接近。
やだ!どうしよう。
マジなの?!
絶対絶命のピンチ!