理玖のお母さん…。
部屋に入るなら今がチャンスだよ。
……ってか、お願い。
バカな言動をしてしまった救いようのない私を今すぐここから救い出して。
崖っ淵に追い込まれた愛里紗は神頼みしか方法はない。
すると、暫く首を傾げていた理玖は、何かに感づいたように吹き出した。
「あはは!部屋に入ってからヤケに口数が減ったなと思っていたけど……。さっきからそんな事考えてたの?」
急に腹を抱えて笑い出した理玖。
私の思考が完全に見破られてしまったようだ。
救いようのない自虐発言が悔やみきれない。
神様…。
お願いします。
出来れば時計の針を5分前に戻して下さい。
もし、それが不可能なら今すぐおばさんをこの部屋に……。
必死に逃げ場を探している自分はとても虚しい。
顔が焼けつくように熱くて、熱でもあるんじゃないかと思うほど赤面している。
「うっ………」
「ふぅん。お前がその気なら生理でも何でも歓迎するけど」
理玖は好転を迎えてオオカミ化すると、再び愛里紗の顔に接近。
「いやっ……あのっ……」
「優しくしてあげるから」
「もっ……もう、充分優しいから、いま以上に優しくしてくれなくても平気」
愛里紗は再び身を守る体勢になり、接近してくる理玖の顔から20センチの距離を保ったまま身体を反らせていたが、傾けていた重心に耐えられなくなり、そのままベッドにコロンと倒れ込んだ。