愛里紗は既に頭がパンク状態だが、迫り来る理玖にも対応しきれない。
しかも、ベッドに沈めている右手とは逆の左手は、顔を触ろうとしてゆっくり近付けてくる。



私の右頰を押さえてキスでもするつもりなのかな。
プロ級な迫り方からすると理玖は既に経験済みかもしれないけど、キスさえ慣れていないハジメテの私はどうしたらいいのか……。

しかもキスだって理玖以外の人と経験してないのに。



神様……。
今すぐに子羊のような私をお助け下さい。



愛里紗は窮地に追い込まれるあまり神に祈り出したが、つい先ほど家に上がった際に理玖の母親が言ってたある言葉を思い出した。



『ごゆっくり』



考え過ぎかもしれないけど…。
おばさんがさっき言ってたのは、理玖と二人きりで仲良くゆっくり愉しんでって言う意味だったのかな。




いや……。
それは絶対違う。
いくら何でも親が子達に向かって破廉恥な事を言うはずがない。

だけど、暴走がエスカレートの一途を辿る私の脳内は、もうどうしようもないほど病的クラスだ。