愛里紗は次のテストが運命の鍵を握ると知ると、抵抗するようにプイっと顔を背けた。
「ヤダ、行かない!」
「塾に行きたくないなら、テレビばかり見てないで勉強しなさい」
「おかあ〜さ〜ん……」
「あんたはもう高二なんだから、大学受験のことを踏まえてもう少し真剣に考えないと。お母さんだって、あんたにこんな事言いたくないの。普段からもう少し勉強してくれれば言わなくて済むんだけどね」
母親はチクリと嫌味を届けると、作業途中だった台所へと戻る。
将来…夢…。
まだ先の事はボンヤリしていて、やりたい事とかなりたいものとかわかんないな。
だけど着実に近付いてる近い将来。
当然、母の言い分はよくわかっている。
なりたい職業とかやってみたい事があれば、勉強も本腰を入れるんだけど…。
まだ何も見つかっていないから何もかもが中途半端に。
愛里紗はリビングを離れると、重い足取りで二階の自分の部屋へ戻り、ゴロンとベッドに寝そべった。
昼間にボールが当たった頭部がほんのりと痛みながらも、近い将来の事を考えながら眠りについた。