妄想レベルがワンランクアップすると、顎に汗がビッシリと滲み出した。
まだ心の準備が出来てないよ。
キ…キスはしたけど、次のステップに進める段階じゃないし。
キスだけでもいっぱいいっぱいだったのに。
はっ…早く手を食い止めないと、私の身が危険に……。
愛里紗は既にブレザーの袖を抜き取るだけの状態の理玖の手を引き止めようとして手を伸ばし、家中に響き渡りそうなほどの大声を上げた。
「あぁ……っと、ブレザーはまだ脱がないで」
目をひん剥いて理玖の手を引き止める愛里紗に対して、理玖は何言ってるんだと言わんばかりの目を向ける。
「……えっ、部屋ん中暑いじゃん」
「暑くない暑くない。…ってか、もう寒いし冬になるし風邪を引いちゃうから、まだブレザー脱がなくても大丈夫。理玖はブレザー姿が似合っててカッコイイね。脱がない方が全然キマってるよ。さすがだね!」
興奮するあまり饒舌で早口に。
自分でもよくこんな早く舌が回るなんて思っていなかった。
「お前こそ汗びっしょりじゃない?ブレザー脱いだ方が……」
「わっ、私は汗なんてかいてない!……寒い、うん!寒いの」
愛里紗は理玖の口を塞ぐように声を荒げた。
理玖は不審な言動に首を傾げつつも、渋々とブレザーを身に纏う。
愛里紗は悪魔の囁きによって切実な悩みを抱えていたが、理玖の部屋に入ってからはリアルな進展に苦しめられていた。