先程は感情を取り乱して少し疲れが溜まっていたのか、たった数時間前に咲と話していた内容をすっかり忘れていた。

近所をブラブラとデートしていたけど、日没を迎えたのでデートの延長線上で招かれた敵地に何も考えずに侵入してしまった。



そう……。
現在私がいる場所は理玖の家。
デートの最終地点として行き着き、通されるがままに上がってしまった。



まだハジメテを捧げる気がないから、自宅に上がる事を頑なに拒否するところまでは良かったんだけど…。

中学生時代に何度もお邪魔していた感覚だけが残っていたせいか、疑いも持たぬまま上がってしまった。



浅はかだった…。
しかも「あー疲れた」なんて言って、いとも簡単にテリトリー内のベッドに腰をかけてるし。



『愛里紗のハジメテの相手は理玖くんかもね。なんか、ドキドキしちゃうね』



彼のベッドに腰を掛けた瞬間、再び悪魔の囁きが蘇った。

ここでようやく気付いた。
危機感のない自分に……。



バカバカバカ!
私ったら、大事に守り通してきたハジメテをこんな簡単に捧げるつもりなの……。
気は確か?



しかも、中学の時にコンセントに足を引っ掛けて倒した時に怒られた、腰までの高さの縦型信号機の点灯が赤から青に変わった瞬間……。
ゴーサインが出たと勘違いして私に襲いかかって来るのかもしれないというのに。