咲と別れてから電車に乗り、最寄り駅に到着して改札を出ると…。
改札の先でスマホをいじって壁に背中を持たれさせている制服姿の理玖が目に飛び込んだ。


今日は約束をしていないのにどうして駅で待っているんだと思い、スマホに気を取られている間に駆け寄って正面から顔を覗き込むように声をかけた。



「……理玖、こんな所で何してるの?」

「あー、きたきた。お前を待ってたの。行こうぜ」



理玖はそう言って制服のポケットにスマホを突っ込み、もう片方の手で愛里紗の左手を取って有無を言わさずに歩き始めた。



今日はまだ『おはよう』のメッセージ以外送ってないし、電車の到着時刻だって知らないはず。
私が学校から帰って来るのを改札前でずっと待っていたのかな。




でも、こんな小さな事だって友達の時代には無かったようなくすぐったさを感じる。

きっと大好きな彼と付き合えた咲は、私以上に幸せを噛み締めているんだろう。