ところが、先ほどまで興味津々で話していた咲の表情は一変。
俯きざまに目を泳がせてポツリと小さく呟いた。



「……私のは、参考にならないから」



最近、咲は彼氏の話をしなくなった。
交際した当初はひとり身だった私が羨ましいと思うほど、興奮しながら毎日のように彼氏の自慢話ばかりしていたのに……。



彼氏と上手くいってないのかな。
ケンカでもしちゃったのかな。
それとも、非常にデリケートな話だから言いたくないだけなのかもしれない。

二人の事をよく知らないから、空気も読まずにズカズカとデリケートな話を聞いちゃって悪かったかな……。



咲に申し訳なく思った愛里紗は、シュンとした表情で頭を下げた。



「…ごめん、変な事聞いて」

「あっ……ううん」


「デリケートな話だったよね。もう聞かないから」



二人の間に微妙な空気が流れつつも駅に到着。
改札を通り過ぎたところで軽く手を振って別れ、それぞれのホームに向かう階段へ足を向けた。