夢…だった……。
しかも、物凄く後味の悪い夢。

あまりにもリアルな夢だったから、脳が現実と勘違いしてしまって目覚める直前まで胸が苦しかった。



うなされて目覚めたばかりの私が今さっきまで見ていたその後味の悪い夢とは…。

恋人になったばかりの理玖との楽しい恋愛とは程遠い、胸をえぐられるような切なくて悲しい夢。



悲しみの表情を浮かべている理玖と。

誰かに罵声を浴びせながら馬乗りになって、胸ぐらを左手で掴み上げて右拳を振り上げ、今にも殴りかかりそうになっている理玖。



今はあまりよく思い出せないけど、普段の理玖からは想像もつかないような表情だったのは覚えている。
理玖は目の前で怒ったり暴力を振るった事がないから、実際では絶対にあり得ないけど。


それに、モヤがかかっていたからよく見えなかったけど、理玖に殴られそうになっていたあの人は一体…。




あの夢は右上がりになっていた気分が叩き落とされるほど嫌な夢だった。

私達はまだ付き合い始めたばかりなのに、初っ端からこんな後味の悪い夢を見るなんて幸先悪い。


時間と共に乱れた呼吸は落ち着いてきたけど、ショックが大きかったせいかなかなかベッドから離れる事が出来なかった。




……ま、夢だし。

理玖があんなに怒るなんて有り得ないから、嫌な夢は早く忘れよっと。