愛里紗の心の中の何かが動いた瞬間、理玖の手を後ろからギュッと握りしめた。

理玖は手の感触を感じると、眩しそうに目を細めたまま夕陽を眺めている愛里紗へと顔を向ける。



「やり直そっか。私達…」



気付いた時にはそう呟いていた。


正直、場の雰囲気に飲まれたのが40%。
理玖の強い想いが40%。
私の中途半端な想いは20%だったけど…。


彼の隣にいる事を決意した。




これが正解か分からない。
正直なところ、好きかどうかもわからない。

でも、断る理由なんて一つもない。


だから少しずつ歩み寄ってみよう。
焦らず自分の歩幅で無理をしないように……。





屋上に到着した3分前から深い夜空へと衣替えを始めている景色の中。

理玖は恋する瞳を向けたまま愛里紗の両肩を抱いて、ゆっくりと顔を近付かせて瞼を閉じると押し上げるように唇を重ねた。




夕焼けに包まれている学校の屋上で、私達は恋人として二度目のキスをした。
唇が重なったと同時に二人を照らしていた夕陽の影が二つから一つに……。