ーーあれは、中学校の卒業式の日。

理玖は校門で友達と別れを惜しんでいた私を掻っ攫い、もう二度と足を踏み入れる事のないと思っていた校舎へ逆戻りした。

痛いくらい手を強く握りしめて、次々と教室の前を駆け抜けいき、辿り着いた先は屋上前の踊り場。


その直後に、私は彼とファーストキスをする。



今は学園祭に遊びに来ている来場客や生徒達の間を潜り抜けて走っているけど、スライドするように目に映っていく光景はあの頃と近い。

でも、一つ違うのは今の距離感。

だから聞いた。



「どこへ行くの?」



彼は黙ったまま答えてくれない。
ただただお互いの息を切らしながらひたすら階段を駆け上るだけ。



不器用に絡まっていた足は、疲れてしまったせいか重くてもう上がらない。

階段を何段駆け上ったか分からないほど。

お互いの額にはジワリと汗が滲み出ている。







「ハァッ…ハァッ…」

「……ハァッ……ハァッ……」



ーー理玖が足を止めた先。

そこは、屋上前の踊り場。
卒業式のあの日を彷彿させる場所だった。