愛里紗は待ちくたびれた上に悪びれる様子を見せない理玖を見るなり、機嫌を損ねてプイッと顔を背けた。



「……帰るわ。バイバイ」

「遅れてごめんって……。タイミングが悪くて」


「理玖は相変わらずだね」



愛里紗は気持ちの処理が追いつかなくて冷ややかに嫌味を言う。
だが、理玖は愛里紗の不機嫌な態度を見るなり、ニヤリと微笑む。



「……あれ?イライラしてるって事は、ひょっとしてさっきの女子達に妬いちゃった?」

「ヤキモチなんて妬いてない!よく考えて。理玖が遅れた時間は12分27秒。でも、私が待っていたのはその10分31秒前だから、正確に言えば22分58秒も待ってたの!」


「細かっ!……ってか、お前数学苦手なのによくそんな早く計算出来たな。約束の時間は11時のはずだったけど、10分前から待っててくれたの?」

「……それは、約束したのに遅れちゃったら悪いかなぁと思って。…でも、もういい。帰る」



愛里紗は機嫌を損ねて背中を向けると、理玖は大きな手で愛里紗の頭を包み込むように頭をポンポン二回叩いた。



「わかった、わかったから……。ゴメンな。ほら、せっかく来てくれたんだから、もう行こ」

「………もう」



どうやら私は彼の笑顔と頭のポンポンに弱いらしい。
許すつもりなんてないのに都合良くかわされてる気がする。



今日の理玖は黄色のパーカーに制服のスラックス。
校門で待ってる時に同じパーカーを着てる人を何人も目にしたから、クラスで一括購入したものと思われる。



理玖の案内でアーチを潜り校内へと入る。

この学校に来るのは中三の受験以来。
合格していたら私も生徒の一員だったのに。