理玖が女子集団と親しげにおしゃべりをしている間、私は学園祭を楽しみにしている来場客を横目で羨みながら健気に待っていたのに。
約束時間の10分前には到着してたのに。
今日は誕生日に貰ったハートのネックレスを着けてきたのに…。
なんか、私一人だけが期待してるみたい……。
理玖は十メートルほど先の校門で愛里紗の姿を発見すると、囲んでいる女子集団の一歩前に出て振り返りざまに言った。
「じゃあ、ここで解散~」
「えーっ。もう行っちゃうの?」
「何処に行くの?まだ一緒に居たいよぉ」
「んー。ゴメンっ、バイバイ!」
集団の輪から外れると彼女達にご機嫌な様子で手を振り、軽く走らせながら愛里紗の元へ向かう。
直前まで同行していた女子集団は、諦めたようにと校舎へ戻って行った。
「よぉ、愛里紗。お待たせ〜」
理玖は愛里紗の手前で足を止めて、首を傾けて俯いてる顔を覗き込む。
「待たせちゃった?ゴメンな。ちょっと忙しくて。……あれ、今日はオシャレして来てくれたの?そのスカートかわいいね。似合ってる」
久しぶりの明るい笑顔だけど、反省の色が滲み出ていない。
だから、人知れず握りしめていた拳に圧が加わる。
なによ……。
私の気も知れずに。
普段は『愛里紗、愛里紗』って甘い声を出してベッタリなクセに、さっきは女子に囲まれて鼻の下なんか伸ばしちゃって。
忙しいと言っても、女子集団と戯れてただけでしょ。