ーー朝晩の寒暖の差が激しくなり、厚手の上着を羽織るようになった、十一月初旬。



今は塾からの帰り道。

つい先日まで街灯に照らされて揺れ動いていた二つの影は、理玖が塾を辞めた日を境に一つになった。
家に到着するまで賑やかに笑いあっていた声は、もう過去のもの。



夜空がキレイ。
こうやって空を見上げて帰宅するようになったのは、つい最近のこと。

今まで当たり前のように思えていた事は、時の流れと共に一つ一つ消えていくのかな。





先日、理玖が通っている高校の学園祭に『どうしても来て欲しい』と誘われた。

彼が通う英神高校は、私が通う高校よりも少し偏差値が上。
高校受験に失敗しなければ私もそこの生徒の一員だった。



英神高校は駅から徒歩圏で、校舎も建て替えたばかりでとても綺麗。

何より気に入っていたのは制服。
紺色のブレザーにエンジ色のリボンにグリーンベースのチェックのスカート。
制服が可愛くて有名だから、受験生には絶大な人気があった。