咲は購買で購入したサンドウィッチを口にしながら愛里紗の話を聞く。
時よりウンウンと頷きながら。
話に区切りがついて咲はレジ袋にゴミをひとまとめにして取っ手部分をキュッと固結びにすると、愛里紗に言った。
「それって、恋に近いんじゃない?」
「えっ!…恋?!」
「だって、理玖くんにもう会えなくなると思ったら涙が溢れていたんでしょ。それって愛里紗の気持ちが傾いてる証拠じゃない?」
「…あぁっ……うん。でも、私にはそれが恋なのか、まだよく分かんないな」
「心の中で理玖くんが大切な存在だって気付いたんじゃないかな。それに、理玖くんなら大事にしてくれそうじゃない?理玖くんが愛里紗の彼氏なら安心だし応援したいな」
「うん。それは私も思う。中学の時に付き合っていた時も大事にしてくれたから」
「付き合ったら少しずつ好きになるかもしれないね。深く考えないで前向きに考えてみたら?特に断る理由がないならね」
断る理由かぁ。
付き合うメリットやデメリットは考えたりしたけど、さすがに断る理由までは考えてなかった。
愛里紗は、前向きに考えてみればというアドバイスと、断る理由という新たなカテゴリが加わると、昨日までの考え幅に歪みが生じた。