「お母さんはあんたが散々苦しんできた姿を見てきたのよ。もしこの先、谷崎くんから連絡があったとしても協力出来ない」
「えっ……」
「もう過去の恋なんて忘れなさい。理玖くんと新しい恋をした方が自分の為になると思うよ」
「……お母さん?」
確かに母の言う通り。
谷崎くんは過去の恋。
母は谷崎くんとの恋路を見守ってきたからこそ酷く心配している。
谷崎くんと離れてから毎日泣き腫らした目で進学したばかりの中学校に通っていた。
彼が再び神社にひょっこり現れるんじゃないかと思って、部活動にも参加せず神社に通い詰めたり。
一日に何度もポストを覗いて、彼から手紙を今か今かと待ち焦がれながらポストを開いていた。
でも、現実はそんなに甘くなかった。
音沙汰がない彼と絶望感に満ち溢れていた日々。
大事なモノは、失ってから初めてその大きさに気付かされる。
あの時は、急に引っ越すと言われても現実味帯びなかった。
声も、ぬくもりも、優しさも、いつも手の届くところにあったから。
谷崎くん。
いま元気にしているのかな。
お母さんと話していたら、また思い出しちゃったよ。