「…でも、理玖と付き合い始めた途端、谷崎くんから手紙が届いたらどうしよう。会いたいって書いてあったら混乱しちゃうかも。…な~んてね、あはは。それはさすがに有り得ないか」



と、私が谷崎くんの話題へとシフトした瞬間……。
母は和やかな雰囲気とは打って変わり厳しい口調でこう言った。



「谷崎くんは駄目よ。もし谷崎くんから連絡があったとしても無視しなさい」

「えっ……」



両親の離婚で知らない街に引っ越して行った谷崎くんは、消息を絶ったっきり。
別れ際に必ず書くと言っていた手紙は未だに届いていない。

だから、今さら連絡をよこすとは考えにくい。
母には冗談のつもりで言ったのに、血相を変えるほど真に受けている。