理玖は塾の度に私を家まで送り届けてくれたから、最低でも週三回は母と顔を合わせていた。
ただ顔を合わせていただけじゃなくて、夕飯の残りのおかずを渡したり、世間話をしてから帰る事も度々で。

接点がある分、より慎重になる。



愛里紗は身体を捻ってベッドから起き上がり、膝歩きで母親の横に移動する。



「そうなの!塾を辞めて語学学校に通って英語をマスターしたら、家具の勉強をする為にイギリスに行くって。塾は今月末で辞めるみたいだから、塾帰りにはもう会えなくなるよ」

「寂しいわね…。理玖くんが塾を辞めちゃうって事は、あんたの帰り道も心配になるわね。…で、これからどうしたいの?」


「…わかんない。だけど、谷崎くんとの別れがトラウマになってるから別れられるかわからないし、理玖ともう一度やり直す勇気があるかどうかもわからないの」

「気持ちが宙に浮いてる状態なのね」


「うん、そう」

「理玖くんと付き合うメリットとデメリットを考えてみるのはどう?」


「考えてるんだけどね……。友達としての居心地の良さから抜け出しきれないから余計慎重になるの」

「それは困ったわね……。いずれにせよ、理玖くんに返事をしなきゃいけないから、しっかり考えてあげないとね」


「うん、わかってるよ…」



愛里紗はそう言いシュンとする。



母に相談に乗ってもらっても、結局は自分がどうしたいかにかかってくる。
自分の気持ち次第なんだよね。