「さっき『塾を辞める』って言ったのは、半分賭けてた。卒業式の日のキスと同じように……。そしたら、お前の感情が揺れてるように思えたから、俺にもまだ勝算はあるかなって」

「……」


「待つよ…。じっくり考えてみて。考えがまとまったら返事が欲しい」

「…あ、うん」


「俺は絶対お前を裏切らないし大切にする。…それだけは忘れないで」

「うん、考えておくね」



理玖は照れ隠しをするように軽く鼻をすすると、腕時計を見て現在の時刻を確認。



「うわっ、やっべぇ!もう23時じゃん。お前の母ちゃん心配してるだろうな。ほら、帰ろ」

「うん!」



愛里紗は先程言われた事を頭の中に思い巡らせながら、先行く理玖に追いついて隣から呼び止めた。



「理玖、あのねっ…」

「…ん、何?」



と、横目で愛里紗を見る。



影で見守ってくれたり、
さり気なく優しくしてくれたり、
見えないところでいっぱい我慢したり。

今夜、胸の内を明かしてくれてる間に渋滞していた気持ち。
いま伝えなきゃ一生後悔してしまいそうな気がしたから言った。



「今まで支えてくれてありがとう。…それと、いっぱいごめんね」



私は理玖じゃないから気の利いた言葉が言えない。
それでも感謝の気持ちを伝えたかった。

すると、理玖はいつも通り。



「いーよ。許す!」



ニカッと太陽のような温かい眼差しを向けた。