理玖はブルッと身震いしている様子に気付くと、迷彩柄のウィンドブレーカーを脱いで愛里紗の背中にそっとかける。
「上着ありがとう。でも、理玖の身体が冷えちゃうから、私はいいよ」
「いいから着てな」
理玖は遠慮がちにしている愛里紗にそう言うと、腕を組んで照れ隠しをするかのように目を背けた。
以前も同じような事があった。
自分だって寒いクセに、私を優先して自分の事は後回しに。
「久々に再会したら無理に笑っていた過去のお前はもういなくなってた。多分、咲ちゃんだろうな。お前を変えたのは」
「咲が私を変えた…?」
「……そ。二人とも波長が合ってるし、よく笑うようになったよ。…すぐに逃げるクセは相変わらずだけど」
「ごめん……」
ただ何気ない日々を送っていたように思えたけど、理玖が傍で見ていてくれたから小さな変化に気付いてくれたんだね。