「以前、将来の夢を聞いてきただろ?」

「……うん」


「それから考えたんだ。将来どんな職業に就きたいとか、どんな勉強をしていこうかとか。……そこで行き着いたのが留学。イギリスに留学してもっと家具について学びたいと思った」

「もしかして家業を継ぐの?」


「将来的にはそのつもり」



涙でうっすら視界がぼやけ始めた愛里紗から目線を外した理玖は、後ろを向いて夜空を見上げた。



「俺は英語が苦手だから、まずは語学学校から。手始めに小さな所から少しずつやっていくつもり」

「…うん」


「塾と語学学校。さすがに両方通うとなると、両親に経済的な負担をかけちゃうし自分の時間がなくなる。……だから、塾は辞める事にした。今後は語学勉強に集中するよ」



背中からは表情が伺えない。
ただ、風に揺られて靡いている髪を眺めるだけ。



理玖……。
いまどんな気持ちで話しているの?


真っ直ぐ見つめているその先には、もう未来は見えているのかな。
決意は揺るぎないんだね。

理玖が塾を辞めちゃうのは寂しいけど、夢を応援したい。

中学生の頃からの大切な友達として……。