一瞬不安に襲われた愛里紗は、心を落ち着かせる為に一旦話題を変えた。
「そう言えば、最近彼氏の話を聞かないけど。二人はうまくいってるの?」
「……あ、うん。彼はクールな人だからなかなか思うようにいかなくて」
愛里紗が突然彼氏の話題へとシフトした瞬間、咲は布団を被って頭を枕に落とした。
バサッ……
咲は返事も聞かぬまま愛里紗と反対方向を向いた瞬間、ポツリと呟く。
「愛里紗が羨ましい…」
「えっ…、いま何か言った?」
「あ……、ううん。何でもない。おやすみ」
ギリギリ耳に届くか届かないくらい小さな声で言ったそのひとことは、幸せ絶頂期のはずの彼女の心に暗い影が被っていた。