ーー勉強に戻ってから10分後。
一度リビングに戻った母は、ケーキと紅茶を三人分持って勉強道具を下げたテーブルに手際良く並べた。
「三人で仲良く食べてね。愛里紗、理玖くんと喧嘩はダメよ」
「あんなの喧嘩じゃないけどね」
「あざーっす。うわっ、旨そ……。俺、チョコのやつー」
「おばさん、ありがとうございます。いただきます!」
「じゃあ、ごゆっくり」
母はお盆を下げて部屋を後にする。
理玖はケーキを一口パクリと食べると、先程と同じく軽い口調で、紅茶を手にしてフーッと冷ましている咲に向けて言った。
「さっきの話に戻るけど、咲ちゃんの彼氏の名前は何って言うの〜?」
「…えっ!(その話題は終わったと思ったのに…)」
「まだその話?シツコイから、もうやめなよ。いい加減、咲に嫌われるよ」
「……あはは」
理玖はいっぱい話しかけて咲と仲良くする作戦なのかな。
面白ネタを探そうとしているのか分からないけど、さっきとまた同じ話題を振っちゃって。
咲だって返事をするのに困ってるように見えるもん。