私達は必死にテスト勉強をしてるけど…。
理玖は帰ろうとしないし、学校は中間テストがないのかなぁ…なんて思いながら、ノートに英単語を繰り返しながら書き綴った。

一方、そろそろ部屋から追い出されてしまうと察した理玖は、ベッドに背をもたれてスマホのゲームで遊び始めた。


すると、シンと静まり返っている室内に玄関扉が開く音が。


ガチャ……


物音とレジ袋がカサカサと擦れる音が一旦止むと、気配と共に足音が徐々に近づく。
部屋の扉が開くと帰宅したばかりの母は言った。



「ただいま、愛里紗。いらっしゃい、咲ちゃん。ごめんね…、理玖くん」

「ちょっとぉ、お母さん!理玖に留守番頼まないでよ」

「お邪魔してます!」

「全然イイっすよ。めっちゃ楽しいから」



「理玖ったら、全然帰ろうとしないんだもん。もういい加減帰りなって」



愛里紗は冷めた目つきのまま、理玖に手でシッシッと追い払う。



「追い出そうとするなって。友達だろ」

「愛里紗!理玖くんにひどい事言わないの。愛里紗の為にお留守番していてくれたのよ」

「だって、理玖はさっきから勉強の邪魔しかしないんだもん」



「…っだから、反省して今は大人しくしてんじゃん」

「じゃあさっきの寒いギャグをお母さんにも聞かせてあげれば?笑ってくれるかもね。何だっけ?今井くんいま…」



「あぁ、もーいちいち蒸し返すなって。そんなちっぽけな事を根に持つなよ」

「ちっぽけなのはどっちよ」



愛里紗達の小競り合いに困り顔の母と耳をすまして聞いていた咲は、お互い顔を見合わせてクスッと笑う。