床に敷くものが無くて不貞腐れている愛里紗の尻目に、二人の柔軟剤の話題は盛り上がりを見せる。



「何処のメーカーの柔軟剤なの?」

「確か…、フールって言ってたかな?パッケージがピンクの方」


「フールの柔軟剤好き!香りはフローラルかな?私、この香り好みかも〜」

「俺も好き。いい香りだよね。ほら」



理玖はそう言って、シャツの袖を咲の鼻に近付けた。

私の目の前で二人の距離が近づいた瞬間……。
胸がキュッと苦しくなった。



愛里紗は原因不明な痛みに困惑して胸を押さえる。

一方、愛里紗の異変に気付かない咲は、鼻をクンクンさせてシャツの香りを間近で嗅いだ後、ワッと目を大きく見開く。



「近くで嗅ぐと尚更いい香りかも!」

「だよな。今回の香りは俺も気に入ってる」



談笑し終えて一息つくと、理玖は身体を仰け反って寛いだ。



理玖は柔軟剤の香りを共感してもらおうと思って腕を差し出して、咲は目の前に出されたシャツの袖の香りを嗅いだだけ。

ただ、それだけなのに…。

身体を接近させて楽しそうに話している二人を見ていたら、何故か胸が苦しかった。