しゃがんで荷物を鞄に詰めている愛里紗は、男性の足元が視界に入って顔を見上げると、男性は言った。
「よそ見をしていてすみませんでした」
「こちらこそボーッとしていて、ごめんなさ…」
愛里紗が男性の姿を目に映した瞬間、驚きのあまりに言葉を失った。
何故言葉を失ってしまったかというと……。
高校生の制服を着ている彼は、ツンツンと乱雑にスタイリングしてある茶髪。
右耳にはシルバーのリングのピアスが一つ。
目は大きくてパッチリ二重。
スッと通った鼻筋。
手入れがしてあるキリリとした眉。
透き通ったキメ細かい白い肌。
そして、紺のブレザーにエンジ色のネクタイに、グリーンベースのチェックのズボン。
見覚えのあるその人物は、中学三年生の頃に交際していた、元彼の橋本 理玖だったから。
約一年振りに再会して、お互い目が合った瞬間……。
二人の間の空気が固まった。
お互い高校生になっている姿を見たのは、今日が初めて。
フリーズした互いの口が閉じるまで、およそ20秒の時が刻まれた。
「理玖…」
「愛里紗…………、マジかよ」
地元が同じだからいつ会ってもおかしくない状況だったけど、それが今でまさかこのタイミングだなんて…。
最悪…………。
彼は昔からイケメンでかなりモテていた。
その規模は同級生だけでなく、学校ではちょっとした有名人だった。