しかも、汚い部屋って……。
ここは私の部屋なんだけど。
昨日は隅々までしっかり片付けたし、掃除もしたし、汚くないし!
愛里紗は握りこぶしに力を入れてグッと堪える。
咲が座布団に座ると、理玖はベッドに置いてあるクッションをヒョイと手に取り、咲の右隣にクッションを置く。
理玖が通る度にフワリといい香りが漂う。
咲は鼻をクンクンさせながら、クッションに腰を下ろしている理玖に言った。
「わっ!いい香り。理玖くん、ひょっとして香水付けてるの?」
「香水じゃないよ。母親が柔軟剤マニアで香りには結構うるさいんだよね。あ!これ、最近CMで放送されてる新発売の柔軟剤らしい」
理玖のいい香りの元は柔軟剤だったんだ。
先日、塾帰りに肩にネルシャツをかけてくれた時にほんのりと香ったのは、理玖自身の香りじゃなかったんだね。