「……で、今日は何か特別な日?咲ちゃんを家に連れて来たし」

「中間テストが近いから勉強がてらに泊まりに来てもらったの。咲の家は遠いから、下校後に会うとしても時間的に厳しいし」


「ふーん」



理玖は鼻に抜けるような返事をしたが、突然ふと何かを思ったかのように、前屈みになって愛里紗達の顔をジーッと見つめた。


右……左……右……左……。


まるで振り子のように目を右に左へと交互させた後、ニカッとお日様のような笑顔に。



「何だか楽しそう。…俺、帰るのやめた」



理玖は身体をUターンさせて降りて来た階段を再び上り、二階の愛里紗の部屋へ直行する。



「え!ちょっ……、ちょっと。理玖?」



愛里紗は手を伸ばして後を追うように声をかけたが、鼻歌混じりでご機嫌なまま二階に上がっていく理玖の耳には届いていない。

玄関に取り残されたままの愛里紗達は、キョトンと互いの目を見合わせる。




理玖は昔から人懐っこいタイプだけど、いくら相手が私の友達だとはいえ、間に割り込むのは無謀じゃない?

しかも、ここは私の家なのに何故か決定権がないし。