「どうして理玖がうちにいるの?」



約束をしている訳でもないし、理玖と再会してから家に上げた事は一度もない。
だから、これが正直な感想。


すると、理玖は返事をせぬまま隣の咲に目を向けて、軽く首を傾げた。



「ええっと……、咲ちゃんだったね。さっきインターフォン越しで名前を聞いたから思い出したけど、前にいつ会ったか忘れちゃって。今日もカワイイねぇ」

「やだぁ。恥ずかしいっ!」

「…もう、咲にまでやめてよ!…で、今日はどうしたの?」


「あ、そうそう!昨日塾でお前の問題集を間違って持って帰って来ちゃったから持って来たんだけど。……その反応からすると、問題集がない事に気付いてないだろ」

「えっ!そんなの気付いてるに決まってるじゃん」



と言ってみたが、塾セットは昨日からカバンの中に眠っている。


理玖は家で復習してるから気付いたんだろうけど、怪しげな返事をしてしまったから復習してない事を見透かされちゃったかもね。

わざわざご丁寧に家まで問題集を届けに来るくらいだから。