「明日は金曜日だから、一緒にテスト勉強をしようよ。明日うちに泊まりに来ない?」
「うん、行く行く!」
「勉強で分からない箇所があったら教えてね」
「うん、私がわかる範囲なら」
教室内で咲と何気ない日常的な会話をしていた時、ふと廊下側から突き刺さるような強い視線を感じた。
吸い込まれるように廊下に目をやると、そこにはノグが切ない目つきで教室内の私を見つめている。
「ノグ…?」
バッチリ目が合った瞬間ひとり言のようにポツリとそう呟くと、彼女はひと声かけるどころかハッとした表情を見せてパタパタと逃げるように立ち去った。
ノグは私に話をしに来た訳でもなく、何かを伝えに来た訳でもない。
何かを訴えるような瞳に違和感を覚えた。
「ノグ…、どうしたんだろう。私に何か話があるなら言いに来ればいいのに」
振り返りざまにそう言うと……。
「………」
咲は元気に話していた先程とは打って変わり、目線を落として暗い表情を覗かせていた。
愛里紗は咲の変化にふと気が止まる。
「咲…。どうかしたの?」
「ううん、何もないよ」
咲は口角だけを上げて首を横に振る。
何かを訴えるように見つめていたノグ。
突然笑顔が消失して俯く咲。
二人の異変は一目瞭然だったが、愛里紗にはその原因が見出せない。