ブルッ……
十月は目前だが、未だに半袖姿の愛里紗が肩を竦めて手を組みながら寒そうに縮こまっていると、気付いた理玖は腰に巻いているブルーチェックのネルシャツをスルスルとほどき、愛里紗の肩にかけた。
「うわ〜暖かい。サンキュー!」
「秋なんだから上着くらい持って来いよ。女なんだから、もうちょっと自分の身体に気ィ使って」
「だって、昼間が暖かいからつい忘れちゃうんだもん。……でも、理玖は寒くない?」
「大丈夫!俺の身体は筋肉で包まれてるし」
「あっそ。じゃあ寒くないね。…でも、ある意味寒いね」
「…いまバカにしただろ」
「まさかぁ。バカになんてしてないよ〜」
「嘘つくなよ、バーカ」
こうやって冗談を言いながら笑い合う日々はとても楽しい。
理玖のネルシャツは鼻をくすぐるようないい香りがする。
それに、体温がほんのり残っているせいか暖かい。
こんなさり気ない優しさが女子にとって嬉しかったりもする。