ーーここ最近は、肌寒い日々が続いていた。

虫の音が鳴り響く今は、塾の帰り道。
理玖は今日も私を家に送り届けてくれている。


夜空は雲一つなくて月がキレイに見えた。
暗闇の中、月夜のわずかな光が肩を並べて歩く私達二人を照らし続ける。



笑いを絶やす事なく話し続けていても、目線は美しい月夜へと奪われてしまう。
一緒に歩いている彼も、自然と月夜に目を向ける。




ビュウ………



突然、冷たい北風が背後から私達二人の身体に吹き付ける。
長い髪がビシビシと頬に打ち付けた後、一瞬視界を阻んだ。



二人並んで歩くのがようやっとなくらいの狭ぜましい歩道には、等間隔でケヤキが立ち並んでいる。
木の葉が高いところでカサカサと擦れ合わさっている大合奏が、北風の強さを表していた。