バイトを終えると、私達はお互いの家への分かれ道まで一緒に帰る。
二人とも21時までの勤務だから、店を一歩出たら外は真っ暗。
残念ながら、彼は夜道を心配して家まで送り届けてくれた事は無い。
思い描いていた恋愛像と現実はだいぶかけ離れている。
彼の二歩後ろを歩いている今……。
きっと、彼は私の事なんて忘れてしまっているだろう。
店を出てから口を閉ざしたまま。
ノグちゃんと再会する直前は、自分から喋るようになっていたのに……。
そして、目の前はもうお互いの家への分かれ道。
お別れまで、あと数秒。
残り10歩。
……5…4…3…2…1。
「じゃあな」
彼は分かれ道に着いた途端、久しぶりに口を開いた。
そんな態度が恨めしく感じた瞬間、ギュッと力強く唇を噛み締める。