学校から理玖と二人で帰宅する事が日常化していて、今日も沈黙させまいと思って必死に話題を探しながら家路に向かっていた。



「サオリ達、先週の土曜日に遊園地行ったんだって。今日、興奮しながら話していたよ」

「ふーん。お前も遊園地に行きたいの?」


「えっ!……いや、別におねだり的な意味合いで言った訳じゃなくて……」

「あはは。どこか行きたい所があればいつでも言って。俺らも少しずつ思い出作りしていこう」


「あ、うん………」



と、彼の隣で歯切れの悪い返事をする。


会話が続かない。
どういった返事をしたらいいかさえ分からない。
過剰に意識してしまっているだけかもしれないけど、これから先も今のような接し方で交際していくかと思うと不安だった。



すると、歩いている振動のせいか、理玖の手の甲がコツンコツンと二回ほどリズムよく袖口に当たる。

その時は、至近距離で歩いているから不意にぶつかった程度にしか思っていなかった。


でも、三回目が袖口に当たった次の瞬間……。
理玖はそのまま勢いよく私の手をすくい上げて、握りしめた手を離さぬようにギュッと力を入れた。



理玖の手は想像以上に大きい。

体温が直に伝わり驚くように顔を見上げると…。
彼の口は一文字に結び、まるでリンゴのように頬を赤く染めていた。

じーっと直視していると、照れ隠しをするかのようにプイッとそっぽを向く。



「俺……。マジでお前が好きだから」



耳を澄ませて聞いてた訳じゃないけど、車が横切る音や、草木を揺らす風の音に彼の声がかき消される事はなかった。