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「俺、愛里紗が好きなんだ。……俺達、付き合わない?」



ーー梅雨の時期に差し掛かった、曇り空のある日の学校からの帰り道。

自宅付近で待ち伏せしていた理玖は、少し恥ずかしそうにそう言った。
その時は背負っているリュックの肩紐が片方ズレ落ちても気付かないほど驚いた。



「嘘でしょ?」



疑うのも無理はない。

理玖と言えば、女子からキャーキャー騒がれるほどのモテ男。
狙っている女子はパッと思い浮かべるだけでも五人以上いる。

そんな理玖が私に付き合いたいと言う。



「真剣だよ。嘘で告白なんてしない」



愛おしそうに見つめてくる瞳でストレートに伝えられる。



グループで一緒に過ごした日々は楽しかったし、理玖の優しさも心地良かった。
谷崎くんとの恋を長々と引きずっていたけど、理玖のお陰で少しずつ笑顔が取り戻せたのは紛れもない事実。

だから、正直嬉かった。



谷崎くんへの想いが残っている反面、このままじゃいけないとも思っている。
散々周りの人に迷惑をかけてきたし、少なからず前に進まなければいけない。

それに、もしここで告白を断ったとしたら、グループの雰囲気を壊してしまうのではないかとも思った。

だから、私は……。



「よっ…、よろしくお願いします」



勢いに任せて頭を下げた。
その時は友達の延長線上として後先を考えずにYESの返事。

告白なんて今まで一度もされた事がなかったから、緊張で身体がブルブルと震えていた。



「………ねぇ、妙に堅くない?」

「そ…、そうかな」


「ま、いっか。お前は今日から俺の愛里紗だからな」



理玖はそう言うと、私の肩を組んで真横でニカッと笑った。

これが正解だったのか分からないけど、理玖の彼女になったこの日を境に私達の時計は時を刻み始めた。