母は塾帰りの時間が遅くなっても毎回家まで親切に送り届けてくれる理玖がいるから安心している。
理玖は交際していた当時から私の母親とも大の仲良し。
「お母さん、ただいま〜」
「お帰りなさい、愛里紗。…理玖くん、いつも愛里紗を家まで送ってくれて悪いわね。これ、少ないけど理玖くんのお母さんに持っていってちょうだいね」
母は予め多く作った夕飯のおかずの入っている紙袋を理玖に手渡す。
理玖は受け取った紙袋を一旦両手で軽く開いて中身を確認してから、ニコッと白い歯を見せた。
「あざーっす。おばさんの作ったおかず、いつもマジで旨い」
理玖は私の母親に対しても友達感覚に。
お気に入りの理玖に褒められている母は、満更でもない様子。
「ウフフ。気をつけて帰ってね」
母は玄関に上がった私の隣で手を振り、家路へと向かって歩く理玖を見届けた。
母は私達が別れたと知った時は少し残念そうに。
だから、久しぶりに再会した時は鼻歌なんか歌っちゃったりして。