防災の日であり午前授業だった今日は、日が高い時間に下校に。
九月に入ったとはいえ、風は少しひんやりしてきたけど、まだまだ日中の日差しは強くて焼け付くように暑い。
学校から一緒に帰っていた咲とは、駅の改札を通り過ぎてからバイバイした。
最後に手を振る彼女の笑顔も、先程と変わらず覇気がない。
何か私には言いたくないような嫌な事でもあったのかな?
さすがに半日同じ状態が続くと、気になって仕方ない。
愛里紗と別れた咲は駅の階段を上ろうと足を踏み出した瞬間…。
突然背後から現れた誰かにグイッと手を強く引っ張られた。
「きゃっ!」
思わず悲鳴が飛び出す。
咲は胸をドキドキさせながら、手を引いた人物の方にゆっくり目線を移すと…。
そこには、おととい渋谷で会ったノグの姿があった。
咲にとってノグは今一番会いたくない人。
翔との関係を唯一知っている人物でもある。
「駒井さん。話…しようか。少し時間ある?」
「……うん」
厳しい目つきを向けてくるノグに観念した咲は、額に汗を滲ませながら素直にコクンと頷いた。