ーー紫陽花が街中の景色を彩り、蒸し暑さが肌で感じるようになった、六月上旬の朝。

愛里紗は学校の最寄駅の改札で、背後から元気な声で昔のアダ名で誰かに呼び止められた。



「おはよー、あーりん。今日から夏服だね!」



未だにこんな珍しいあだ名を呼ぶ人は、小学生時代の友達しかいない。

愛里紗は背後へと振り向くと予想通り。
そこには、小学校から高校まで同じ学校に通っている友人ノグの姿があった。



「あーりんはいい加減やめてよ…。恥ずかしいってば。私達はもう高二なんだし」

「はいはーい、ごめんなさい!愛里紗さま〜。…ところで、もうすぐ中間テストだけど勉強してる?」


「私が二週間も前から勉強すると思う?」

「だよね〜。愛里紗が必死に勉強してる姿なんて見た事ないし」


「言ったなー!さすがにそれは言い過ぎ!」



通学途中で合流したノグとは、仲良くふざけ合いながらも一緒に登校する事に。