「谷崎、マジで久しぶり。元気だった?」
「野口も元気そうで良かった」
「小学校を卒業してから別れの挨拶もないまま引っ越して行っちゃったから、元気にしているかどうか気になってたんだ。みんな心配してたよ」
「挨拶しなくて悪かったな。……でも、驚いたよ。野口と咲ちゃんが知り合いだったなんて」
「駒井さんとはいま同じ高校に通ってる。……違うクラスだけどね」
「実は俺、名字が変わったんだ。今は【谷崎】じゃなくて【今井】なんだ」
「…そうだったね。あんたが引っ越して少し経った頃に、両親が離婚したっていう噂を聞いたよ。大変だったね」
ノグは話が盛り沢山で途切らせる事なく喋っていたが、翔の隣に座る咲が黙っている姿が気になって仕方ない。
一瞬目は合ったが、咲はストンと目線を落として、逃げ場のない現実に観念した様子を見せる。
「私…、いま付き合ってるの。翔くんと……」
「……そう」
ノグは身体を震わせている咲の表情が何かを物語ってるような気がして、それ以上質問するのを辞めた。
咲は二人のやりとりからして想像以上に親しい仲だと察し、精神的に追い詰められていく。
「今どこに住んでるの?」
「三鷹大平町」
「へーっ。結構遠くに引っ越したんだね」
ノグは再び話を始めたが、会話は途切れ途切れに。
その理由は、咲が蛇に睨まれた蛙のように目を泳がせているから。



