ーー場所は若者の街、渋谷。
愛里紗の小学生時代からの友人のノグは、二日後に始業式を控えた今日、高校の友達と二人で渋谷にショッピングに来ていた。
電車を降りてからセンター街を目指す。
スクランブル交差点に足を踏み入れて、多くの人ごみが駅方面へと押し寄せてくる中、ふと懐かしい顔がノグの視界を捉えた。
交差点ですれ違いざまに一際目立つ彼に気付いた瞬間、交差点の中央で足が止まる。
古い記憶が引き出されると、目の色を変えて振り返った。
「………谷崎?」
確認の意味も込めて呼んだ。
呼び止められた翔は二、三歩先で足を止めると、ゆっくり振り返る。
「野口……?」
「やっぱり谷崎じゃん!超久しぶり~!」
ノグはおよそ四年半ぶりに翔と再会。
小学校卒業と共に街から姿を消した後、初めて顔を合わせる事に。
お互い顔を見合わせた瞬間、驚きと懐かしい気持ちに包まれていく。
でも…。
本当は出会わない方が良かったのかもしれない。
姿を見ても、見て見ぬ振りをするのが正解だったかもしれない。
何故なら、翔の隣には腕を組んでいる女性がいるから。
しかも、その女性は現在同じ高校に通う愛里紗の親友 咲だったから…。