一ヶ月弱通った夏期講習は、今日が最終日。
理玖は夏期講習が始まってから、同じ教室内の女子全員に話し掛けたのではと思うくらい、毎日のように取っ替え引っ替えで女子達に積極的に話しかけて、短い塾生活を堪能していた。
でも、私の到着に気付くと女子達の輪からあっさりと離れて私の席へとやって来る。
その姿は、子犬が尻尾を振りながら母親の元へと向かって行く時と同じ。
とてもとても、私に懐いている。
「ウィーっす。今日も愛してるよ〜。俺には愛里紗が一番!」
「あー、はいはい。しっしっ」
「愛情たっぷりに挨拶したのに、いきなりしっしっ…って。冷たいなぁ……」
お決まりのように甘い言葉を吐く理玖。
毎日塾で顔を合わせているうちにすっかり慣れてしまったせいか、楽しく冗談を言える仲まで関係回復した。
毎日呪文のようにさらりと伝えてくる愛の言葉は、信用出来ない以前に理解不能。
まぁ、『愛してる』なんて冗談だって分かってるけど。
理玖はモテるけど誰にでもおちゃらけているせいか、私達が二人で話していても誰も何も文句は言わない。
どちらかと言うと世渡り上手なタイプかも。