愛里紗は不思議そうな表情で理玖のほつれ放題の制服を色んな角度から見回した。
「理玖、制服のボタンは何処へ行っちゃったの?」
「……あ、これ?」
理玖は制服のボタンが付いてあった箇所をグイっと引いて首を傾けた。
「うん。どうしたの?」
すると、理玖はフッと笑い学ランの左ポケットに手を突っ込んだ。
「あるよ」
そう言って、予めしまっておいた金ボタンをポケットから取り出して手のひらに置いて見せた。
手元には金ボタン一つだけ。
年季により色をくすませながらも、屋上扉の隙間から差し込む光によって、キラリと輝いている。
「それだけ?他のボタンは?」
「他はない」
「どうして?」
「担任の最後の話を終えてから教室を出たら、廊下で待ち構えていた他のクラスの女子や後輩達が一斉に群がり始めて、あっと言う間にボタンが次々と引きちぎられて全部持ってかれた」
「スゴっ……。理玖は人気者だね!」
さすが理玖。
爽やか系イケメンで愛嬌があって性格が明るいから、学校の伝説の人物になりそうなほどモテていたもんね。
ボタンが全部奪われるなんて納得がいくわ。