咲達二人がやって来たのはオープンしたてのカントリー風カフェ。
木材の香りが入店したばかりの二人の鼻に漂う。



咲はメニューを立ててコーヒーを選んでるフリをしながら、向かいに座る翔を上目遣いで眺めた。

窓から差し込む日差しを浴びている翔は、まるでスクリーンから出てきた俳優のよう。
長い睫毛はメニューへと向けられている。





それぞれドリンクを注文。
咲は盾としていたメニューを店員に返却すると、目線を誤魔化すものがなくなった。
気付けば緊張でテーブル下の膝の上に置いてる手がガタガタと震えてる。



こんなに震えたら手元だけを隠していても気付かれちゃうかもしれない。
会話だって、愛里紗と話すみたいスムーズに話せばいいのに、翔くんが正面にいるだけで頭が真っ白になる。




咲は口から第一声が出てこないが、翔も自分から口を開こうとしない。

二人の会話が成立しないうちに、先ほど注文したコーヒーが店員によりそれぞれの目の前に置かれた。