理玖はロウソクを次々とケーキに刺していき、母親は手際よくライターでロウソクに火を灯した。
「……さ、愛里紗ちゃん。ロウソクの火を吹き消してね」
理玖の母親は部屋のカーテンを閉めて室内を薄暗くした後、向かい合わせに着席している二人の間に座り、炎の明かりに照らされた顔を向けてそう言った。
十七歳になった今はさすがにバースデーソングは歌わず、シンプルに儀式が行われる。
ケーキ上のロウソクは、大きいのが一本と、小さいのが七本。
ケーキに刺さっている大きいロウソク一本が増えてから、時間の進みが早くなったような気がする。
「ありがとうございまーす。それじゃ、遠慮なく」
愛里紗は十七本のロウソクの火をグルリと首を捻りながら、フーッと力強く一度で吹き消す。
すると、理玖は言った。
「すげぇ肺活量。ロウソクが一気に倒れそうな勢いだな。……って言うか、ケーキ自体が倒れるんじゃない?」
「冗談はやめてよ〜。今日は特別な日なんだからぁ。雰囲気台無し!」
「ウフフ。愛里紗ちゃん、誕生日おめでとう!理玖、プレゼントを渡すなら今がチャンスよ」
「はっ……はぁっ?!……そんなの、用意してねぇし。母さん、いい加減にしろよ」
と、理玖は動揺しながら少し迷惑そうにフンとふてくされた。
おばさんと理玖はいつもこんな調子。
今日も相変わらず仲がいい。