理玖は遠くの夕陽に目線を移して眩しそうにしながら言った。
「人生は長いのに分岐点を機に夢を決めろと言われても難しくない?」
「確かに…」
「自分にはまだ分かんない。今なりたいものとか、これからやってみたい事とか。……だけど、時期が来るまでやりたい事や夢が見つからなければ、親父の店を継ぐのもいいかなって思ってる」
理玖の父親が経営しているアンティーク家具店に、昔一度お邪魔させてもらった事があった。
古めかしく木の温もりを感じる高級感あふれるアンティーク家具は、理玖の好きなアメリカンポップ調とは程遠い。
だから、家具店の跡継ぎを視野に入れてると知った瞬間、意外に思えた。
「へぇ、エライな。色々考えているんだ」
「だろ〜、俺はただのバカじゃないだろ」
せっかく褒めてあげたのに、理玖は誇らしげに得意顔。
褒めるとすぐ調子に乗っちゃうんだから。
「普段はエロ本しか読んでないと思ってた」
「おぉい…。真面目に話していたのに、その話を引っ張り出すのかよ」
「あはは。冗談だって」
「イテテ……。ガラスのハートが傷付いたわぁ」
「理玖のハートならガラスじゃなくて鋼鉄製だから、この程度なら平気でしょ」
「相変わらずひでぇなぁ」
こうやって冗談を重ね、中学の頃と変わらないノリでふざけ合う。