家まであと半分の距離まで縮めた頃、まだ将来の夢が模索中の愛里紗は聞いた。
「ねぇ、将来の夢は決まってる?」
すると、理玖は今日で何度目か分からないほどの煌めくような笑顔を再び向け、間髪入れずに答えた。
「あー、俺?もちろん愛里紗の旦那」
「ふざけないで」
何となく予想はしてたけど、返事はいつも通りのおふざけモード。
こっちは結構マジメに聞いたのになぁ。
理玖は膨れっ面の愛里紗に顔を傾かせながら近付け、まるで反応を楽しむかのようにニンマリと微笑む。
「あはは。冗談!夢は決まってないよ、まだ」
「私も同じ…」
夢が決まってないのは私だけじゃないんだと知った瞬間、少しホッとする。
最近は特に周りの人から影響されていたので、夢のない自分だけが周りに置いてきぼりにされたような気分になっていた。