理玖の家庭は仲がいい親子で理想的。
きっと、理玖のお嫁さんになる人は毎日笑って過ごせそう。



でも、まだ私の事を『俺の愛里紗』なんて言ってるんだ。
別れてからもう一年以上も経っているのに、まだ理玖の所有物?

…ったく、相変わらずチャラいなぁ。




「早く俺の部屋に行こー」



廊下に足を進めている理玖は、背後の愛里紗に振り返ってそう言った。
だが、愛里紗の横に立つ母親はニヤリと口角を上げる。



「あんた、部屋で愛里紗ちゃんに変な事しちゃダメよ。愛里紗ちゃんはまだ嫁入り前なんだから」



理玖は母親の冗談を真に受けると、カーッと顔を赤くする。



「あのなぁ、変な事する訳ねーし。それは親が子に言うセリフかぁ?…ほら行くぞ、愛里紗」

「……あ、うん。お邪魔します」

「んふふっ」



理玖は仏頂面になりながらも、久しぶり家に来て懐かしさに浸っている愛里紗を連れて、トントンと階段を上り二階にある自分の部屋へと向かった。