理玖は人差し指で暗い顔をして黙り込んでる愛里紗のおでこをクイッと押し上げる。
すると、愛里紗の目線はそのまま理玖の方へ。
「まぁ、いいや。面倒くせぇ」
理玖はぶっきらぼうにそう呟き、沈黙を打ち破った。
理玖は昔から優しかったけど、別れてから距離を置いていた今この瞬間も、私の気持ちを汲んでくれる。
だから、この優しさに甘えてきた。
「ごめんね」
愛里紗はションボリしながら頭を下げると、理玖はニカッと太陽のような温かい笑顔を向ける。
「いーよ。許す!」
理玖の笑顔が届き、愛里紗はホッと胸を撫で下ろした。
昔はこの笑顔が好きだった。
いつも明るくて誰にでも平等。
人を笑わせる才能を持っていて、みんなを笑顔にしてくれる人気者の理玖が好きだった。
春に再会した時はサイアクだって思っていたけど……。
サイアクなのは理玖じゃない。
逃げてばかりの私の方がサイアクだった。



